オッサン(私)は、今現在はまったく芸術とはかけ離れたガテン系の仕事をしているのですが、一応美術大学を出ています。
なので、素晴らしい芸術眼を持っていたり、芸術論を論じることができるのかというと決してそんなこともなく、普通以下の感性でヌケヌケと生きている次第でございます。
そんなミジンコ並みの感性を持つオッサンでも、たま〜に「これは是非観たい!」と思わせる展覧会があります。
東京都美術館で開催されている「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」もそのひとつ。
絵画は「モネ・マネ・セザンヌ・ゴッホ・・・」などの印象派がオッサンのお好みです。
印象派の絵画は、対象物との間の空気感の表現が微妙な感じがなんとも言えないんですよねぇ・・・
なんてことを言い始めると、感性の稚拙さが露呈してしまうのでやめておきます。
ということで今回のモネ展を観に行くべく作戦を練る。
今回のモネ展の目玉は《印象 日の出》と《サン=ラザール駅》だが、残念ながらこの2作品は同時に展示されないらしい。
9月19日〜10月18日までが《印象 日の出》、10月20日〜12月13日が《サン=ラザール駅》の特別出展になっている。
いろいろな事情があるのだろうが、開催側の思惑もチラホラ見え隠れしているようだ。
オッサン的には、まずは”印象派”という呼称の由来となったの《印象 日の出》をしっかりと崇めてから、都合が付けば《サン=ラザール駅》も改めて観に行くことにする。
どっちだ?と聞かれれば、やはり《印象 日の出》のほうがインパクトはある。
”モネ”というビッグネームな上、《印象 日の出》は21年ぶりの来日ということで会場の東京都美術館の混雑は必至だ。
せっかく《印象 日の出》が来るし、どうせならゆっくり観たいので仕事をサボって平日に行くことにする。
問題はいつが空いているのか・・・
いろいろ情報を集めても日によって空き具合が違っていたりするが、それでも”金曜日””午前11時頃””午後2〜3時頃””閉館間近”が空いているという意見が多い気がする。
仕事の代休を取れたのが金曜日でなく水曜日だったので、これはしょうがない。
時間は、帰り道に夕方の帰宅通勤ラッシュに揉まれるのも嫌だし、帰宅が遅くなるのも嫌なので【午前11時に突撃】に決定。
当日、乗り込んだ電車はサラリーマン達でまだ混んでいる時間帯だったが、オッサンは「オレはこれからモネの展覧会に行く!」という興奮で、他の乗客たちに「分かるか!!」の視線を送り続けていた。
これから仕事のサラリーマンたちを横目に「平日に絵画の展覧会なんて優雅だなぁ〜」と優越感に浸りながらウキウキしていた。
展覧会は自分のペースでゆっくり観たいので今日も一人での鑑賞となる。
オッサンは待ち合わせの時間には早く来るタイプで、当日は誰と待ち合わせるわけでもないけれど、予定よりもかなり早く上野駅に到着。
こちら側の改札口は、まだ昔の名残りがある
上野恩賜公園も何年ぶりだろう・・・
案内板で東京都美術館の場所をチェックして移動を開始。
上野恩賜公園内の美術館・博物館などは開館時間がまもなくなので、続々と人がやってくる
人の流れを見ていると、どうやらオッサンと同じ方角に向かっている。
イヤな予感はするが「まぁ、なんだ・・・上野動物園にでも行くんだろう・・・」と自分に言い聞かせていたが、残念ながら予感は的中し、モネ展の方に人が流れてゆく。
上野動物園方向に行く人はまばらで・・・
モネ展に続々と人が吸い込まれてゆく
まだ時間は10時前で、東京都美術館は開館したばかりだから11時まで待てば空いてくるだろう・・・
というよりも、空いてくれぇ〜!!と願う。
というわけで近くのカフェで時間を潰す。
オシャレな建物ですな〜
訳のわからん複雑なメニューは頼めないので、オッサン定番の「エスプレッソ」を注文。
オッサンはコーヒーを飲むといつもお腹がゆるくなるので、カフエではいつもエスプレッソを頼みます。
不思議とエスプレッソならお腹は大丈夫!
快晴の秋。平日のオープンカフエで優雅なヒトトキ
オープンカフェにはジャズが流れている。
贅沢な時間だが、これが休日ならこのカフエも人でごった返してるだろう。
エスプレッソを飲みながら人の流れをチェックしておくが、流れはまだモネ展に入っていくばかりだ。
そんな優雅な時間を邪魔するのが、隣に座っている犬を連れたオバサン×2だ。
ほとんどが犬の話ばかりで、犬を飼っている人には常識的な表現なのかもしれないが、「◯◯(←犬の名前)のママは・・・」とか「あの子(犬のことを『子』と表現する)は何才(犬の歳を『才』という)」などという具合だ。
オッサンは全く聞く気はないのだが、カンにさわる声質と音量なのでズカズカと無遠慮に耳に入ってくる。
会話の内容から推察するとオバサン×2は少々セレブらしい。
そりゃそうだ!
平日の昼間に犬の散歩中にカフエにいるなんて、パート勤めの庶民にはできまい。
会話の内容は、犬の薬やら手術やらでかなりのカネがかかるという話になっていくのだが、オッサンも幼いころに実家で犬(雑種)を飼っていたが動物病院なんて行った記憶が無い。
現代では人間とともに犬も高齢化の時代で、高度な医療が必要らしく動物の医療費も高額になっているようだ。
「絶対に犬は飼うまい!」と心に決めたオッサンなのでした。
まぁ、高齢化したオバサンと犬の話はど〜でもいい!
11時近くになってくるとモネ展から出てくる人もチラホラと見かけるようになってきた。
「そろそろかな・・・」と東京都美術館に突入するが、早くも【10分待ち】の表示で気持ちが萎える。
TDRばりに待ち時間の表示が・・・
でも、ここまで来たんだから今更引き返すのも面倒くさいし、10分位ならなんとかなるだろうと入口へ向かう。
エスカレーターを下ってロビー階の正面エントランスへ。
入口はロビー階(地下)にあるんだ〜
前売りチケットを取り出す。
前売りチケットだと200円の割引だ。たかが200円されど200円
正面エントランスを入るといきなり!待ち時間が倍になった!
なんか騙されたみたいで良い気がしない。
こういう情報はキチンと統一するべきだと思うが
でも、今更引き返すのもますます面倒くさいので覚悟して突入する。
念のため、インドメーションで前売りチケットのまま入場できるかを確認する。
この前売りチケットで直接入れるとのこと。
そして行列に合流する。
日本人はおしなべて行儀よく行列に並ぶ民族だ
ゾロゾロと進むのではなく、数十人くらいのお客さんを中に入れては一旦ストップするという進み方をする。
角を曲がって、やっと入場できるのかと思ったら、もうひとひねり続いていてガックリする。
TDRの行列あるあるみたいで力が抜けた
そして本当に20分並んでやっと入場できた。
入場口には音声ガイドの申し込みがあり、空いていれば借りようと思っていたが音声ガイドも混んでいたのでやめた。
展覧会場は思っていた通りの混雑ぶりだ。
この状態を懸念していたんだよな〜。
人気の展覧会は、このようにベルトコンベア式に観ざるをえない状況が多い。
オッサンがフランスやイタリアに行った時は、有名な美術館や博物館でも本当にゆったりと観れたから、日本の芋洗い状態の展覧会は残念でならない。
それでもせっかく来たんだから、しっかりと観ていかなくてはね。
あまりの混雑ぶりに順番通りでなく、空いているスペースから観ていくが、その内に良い方法を発見。
車イスの方がいて、その方の横にくっついて廻っていると、とても良く観ることができる。
利用しているようで申し訳ないが、周りの方も車イスの方には気を使っていようで割り込んでくる奴もいない。
「あ〜、日本人って本当に人がいいのだなぁ」と感心する。
はじめは人物画から始まったが、ポップ調な表現に親しみが持てる。
モネは風刺画も描いている(同じフロアに鉛筆で描いた風刺画も展示されている)ので、それも納得できる。
どうせならオッサンもモネに人物画を描いてもらいたいものだ。
次は風景画だが、やはり印象派の表現は風景が似合う。
形の変わり目や遠近の境目に強いハイライトを置くのが特徴的だが、通常の表現だとそんなことをすると違和感が出てきてしまうが、モネの場合はそれが至って自然に見えるから不思議だ。
風景画の中で目に留まったのが「霧のヴェトゥイユ」。
画面全体がボンヤリとしているが、霧の向こうに佇むヴェトゥイユの教会がとても力強い印象を受けた。
鉛筆の風刺画も展示されているが「やはりうまいなぁ〜!」
一本の線の中に幾つもの表現があるので、少ない線で効果的に描かれている。
鉛筆画は誤魔化しが効かないから、上手い下手がすぐに分かるよね。
ロビー階〜1Fへ上がるといきなり本日のメインディッシュ《印象 日の出》が鎮座していた。
やはり他の作品とはオーラが違う!モノクロに近い背景に鮮やかな日の出と水面に反射する光が飛び込んでくる。
画中の太陽が日の出なのか日の入りなのかといった議論があるらしいが、オッサン個人的には太陽のシャープさはやはり『日の出』を描いていると思う。
この代表作を間近で観たい場合は、ベルトコンベア式に歩きながら観るしかない(止まって見てると注意される)のだが、ゆっくり観たい方は後方で眺めることができます。
ただ残念なのがその展示方法。
暗い部屋の中で作品にスポットライトを浴びせているので違和感がある。
更に絵のフレームにガラスがハメてあるためガラス越しに観ることになる。
なんか透明なポスターに後ろからバックライトで照らしているように見えて作品本来の色には見えませんでした。
「作品保護」のためにしょうがないかもしれませんが、とても残念でした。
実はオッサンは《印象 日の出》を観るのは初めてではありません。
フランスで一度観た時は、自然光でしかもガラスなんてありませんでした。
その時の印象がとても強いので、今回の展示法はとても違和感があります。
美術館の一番の目的は、作品保護かも知れませんが展覧会をやるのであれば、自然光の中で作品本来の色彩を失わない様な展示をするべきだと思います。
近くにいたオバサンも「気持ち悪かった・・・」と言っていたように、『異質』な印象を受けたのはオッサンだけではないと思います。
《印象 日の出》の次に《睡蓮》(73cm×92cmの小振りな作品)が展示されていたのですが、ココも人だかりです。
睡蓮のみならず、水面に映る木立など水練池の周りの風景もイメージすることができるのは流石だ!
《印象 日の出》のようなガラス越しでなかったのでホッとしました。
でもまぁ、素晴らしいは素晴らしいのですが、コレも作品本来の色に見えませんでした。
もっと水の色が深いと思うのですが、スポットライトの光で何となく白っぽく薄っぺらに見えました。
これも展示方法が問題だと思います。
次は大型の睡蓮の連作が展示されているスペースです。
オッサンは《睡蓮》には苦い思い出があります。
パリのオランジュリー美術館で大パノラマ《睡蓮》を観る予定でしたが、観に行く当日に熱を出してしまいホテルで寝込んでいました。
なので、死ぬ前になんとしてでもオランジュリー美術館に行ってリベンジをしなければなりません。
今回、モネ展に展示されている睡蓮の作品たちは、オランジュリー美術館の作品のための『準備』のために描かれた作品群のようです。
大作には、このように準備のための「習作」があるのですが、オッサン的には習作のほうが勢いがあり、作者の想いがはっきりとわかるので面白かったりします。
オランジュリー美術館の《睡蓮》は見れなかったけれど、睡蓮の作品の色ってコレなんだと思います。
日の出の隣にあった睡蓮は、スポットライトの加減で本当の色には見えませんでした。
最後のフロア2Fには、モネ晩年の作品が展示されています。
白内障を患っていた時のモネが描いた「バラの小道」をはじめとする、モネの庭をテーマにした作品が並んでいます。
赤系の作品が多いのですが、病の為に思い通り描けないモネのもどかしさや悔しさが伝わってきました。
オッサンも学生時代に経験があります。
思い通り描けなかった頃に赤系を多用していた時期があったのを思い出しました。
一番印象に残ったのは「作品No.77 睡蓮の池」です。
余白が多く、未完成な感じはするんだけれど筆の勢いと迫力があり、キャンバスに収まりきらない悔しさが表現されているような印象を受けました。
日本の展示法についていつも思うのですが”ゆとり”がない。
狭い空間内の薄暗い展示室でスポットライトをあてる展示・・・
反面、欧州の美術館や博物館は自然光を取り入れた広い空間で展示をしています。
どちらが作品本来の自然な姿かは議論の余地はないと思います。
有名な作品が混むのは日本も海外も変わりませんが、日本の場合は狭い展示スペースでの”見物”という残念な状態。
そして何よりも残念なのが”模写”ができない事。
フランスで美術館を渡り歩いていた時によく見られた美術館内でイーゼルを立てて模写をする光景。
時には学校の授業なのか、小さな子どもたちが床に寝そべりながら有名作品を真似して描いている姿。
うらやましくて仕方がありませんでした。
日本ではあり得ない光景でした。
学生時代に「描くことは観ること」とよく言わました。
文化の違いといえばそうなのですが、小さな頃から日常的に作品と触れ合う(描き観る)体験はかけがえのないものだと思います。
上手に描けるかどうかは別にして、幼いことから作品と同じ空間の中で”肌で味わう”事ができるのとできないのは大きな違いではないでしょうか。
「模倣は芸術のはじまり」といいますが、描く人は誰でも模倣が大切なことを知っているはず。
印刷物ではなく”本物”を模倣することが芸術のはじまりだと思います。
日本人に世界的な芸術家が出てこないのは、こんな環境と無関係ではないと思います。
展示室を出るとすぐにモネグッズのショップです。
ココも人でごった返しています。
レジには長蛇の列。あれ?ここも写真撮影は禁止なのかな・・・
モネを観た人が興奮冷めやらぬ内にグッズを買い込むように、展示室を出た途端にショップが設けられています。
「さすが!商売上手!!」と言いたくなりました。
売れ筋はポストカードやポスター(しっかりとした紙に印刷されているので上等に見えます)ですね。
何点も買って行かれる方が多かったです。
さすがに《睡蓮》がらみの商品は人気があり、品切れ見受けられました。
個人的にはクリアファイルや切手シートがキレイに見えました。
オッサンが買ったおみやげは「かっこいいモネ」のブロックメモとモネ印のポケットサンドでした。
結果的にかっこいいモネの商品という困った選択・・・
ブロックメモはモネ展のグッズショップで買いましたが、ポケットサンドは上野駅のエキナカ「ecute」内の「とんかつ まい泉」で購入しました。
上野駅のエキナカではモネ展とのコラボ商品があるので要チェックです。(↑もっと宣伝すればいいと思うのですが・・・)
ジューシーなとんかつと半熟卵が絶妙!さすが「まい泉」。お値段も・・・・さすが「まい泉」(泣)
今回のモネ展で気をつけたい所をまとめておきます。
今回は事前情報で空いている時間を狙ってみたのですが、結果的には”混んでいる時間”だったようです。展覧会を出た時には、入場した時の行列が半分くらいになっていました。
いろいろ考えて狙うよりは、その後の都合などに合わせて入場すればいいのではないでしょうか。「混んでいたらしょうがない・・・」と割りきりましょう。
ただ、休日は恐ろしくて想像もできないです!
やはりビッグネームの展覧会は再入場ができません。
念のため、スタッフに聞いてみたのですが「再入場は断り頂いています」と思った通りのつれない返事が返ってきました。
東京都美術館のモネ展は、ロビー階〜1F〜2Fと三層にまたがった展示になっています。
各階はエスカレーターもしくはエレベーターでつながっていますが一方通行です。なので一度上階に上がってしまったら下に降りることができません。
各階の作品はしっかりと観ておきましょう!※同じフロア内は逆流ができるので、空いている作品から観たり、もう一度観なおしたりができます。
展覧会を観ながらメモを取る場合は鉛筆のみ使用可です。
まぁ、これは常識なのかもしれないし入口に明記してあるのですが、オッサンはそれを知らずにボールペンを使っていたら注意されてしましました。
入場する時に鉛筆の貸出があるので、もし忘れた場合は借りて下さい。展示場内のスタッフさんからも借りれます。
混雑するモネ展を観た後、展示場を出たすぐのグッズショップのお会計の列で萎える方も多いと思います。
「グッズは欲しいけど、また並ぶのはもうイヤ!」という気持ちもわかりますが、モネ展のグッズはここでしか買えません。(ネット販売で手に入るグッズもありますが・・・)
東京都美術館の正面エントランスを入るとミュージアムショップがありますが、そこに売っているのはモネ展の商品とは違います。
なので、モネ展グッズをご所望の方は最後の力を振り絞って会計の列に並ぶか、ネット販売で手に入れるかという選択になります。
10月20日からは《サン=ラザール駅》の特別展示があります。
これは観たことがないので行ってみたいが、さて、平日休みが取れるかどうか・・・