いつものようにオッサンが図書館に暇つぶしに行ったときのこと。
ある釣り雑誌にテナガエビ用の天秤(テンビン)仕掛けの記事が載っていた。
オッサンは2015年からテナガエビ釣りを始めたのですが、始めたキッカケはハゼ釣りがシーズンインするまでの”つなぎ”としての位置づけだった。
そんな所在ないキッカケだったので釣果もトホホな訳ですが、やはり釣れないと面白くないし悔しい。
釣れている人を横目に見ながら「なんでコッチには釣れないねん!」っと、行くたびに悶々とした日々を過ごしていました。
釣りモノにはやはりその人との相性があり、せっかちなオッサンはテナガエビ釣りのようにじっくりと喰わせる系の釣りは苦手だ。
魚がエサをつっついているのにアワセないというのが我慢ならん!
しかしそんなこと言ったって釣れないものは釣れない訳で、技術がないなら道具でカバーするしかない。
記事によると、真ちゅう製の心棒からステンレス製のワイヤーが両方向に伸びる、ヤジロベーみたいな形をしているテンビンだ。
「ヤジロべー」と言っても若い世代にはイメージしづらいと思うが、オッサン世代にはコレしか形容しようがないのである。
←ヤジロベーの図。少々イメージとは違うんだけれど、基本的にはこんな感じのくだらなくも面白おかしい玩具だ。
ちなみに同じ「ヤジロベー」とはいっても、ドラゴンボールに登場するキャラではないのは言うまでもない。
さらにこのキャラの声優さんとクリリンの声優さんは同じ、というネタもど〜でもいいのである。
話をエビに戻す。
オッサンがこの天秤に興味を持ったのは”向こう合わせでオートマチック的に釣れる”というくだり。
テナガエビ釣りをしたことがある方なら経験あると思うが、テナガエビって結構ハリ掛かりしない。
「おっ!エビがくっついている!!」っと竿をあげてもピュー!っていなくなる。
そこでゆ〜っくり聞きアワセを入れて、まだハリ掛かりしてないようなら、ちょっと竿を下げてエサを喰わせて、再びゆ〜っくりと竿を上げて・・・(以後リピート)といったエビとの駆け引きが必要になる。
これはこれでテナガエビ釣りの味であるが、ここまでやっても釣れないことが多々ある。
いくら醍醐味って言っても、釣れなきゃ話にならん!
さらに記事はこんなことも言っていた。”不慣れなビギナーにも簡単にテナガエビが釣れて、その引き味が楽しめるので大変喜ばれています”
なぬ!?これは買いだぁ!!
という訳で、不慣れなビギナーであるオッサンも大変喜びたいので、結果オーライの釣りを目指すという即物的な作戦を実行する。
この十字テンビンは東京都葛飾区西小岩の「竿しば釣具店」で制作・販売しているらしい。
オッサンは仕事でいつも東京近郊を車でフラフラしているもんだから、葛飾方面へ行くついで(と言ってもかなり強引に寄り道をしたけど)に「竿しば釣具店」へお邪魔した。
地域密着型の釣具店というたたずまいで、オッサンが行った時はご年配の女将さんが店番をしていた。
そして、女将さんのお膝元にはお目当てのブツが並んでいるではないですか。
”お〜雑誌で見たのと同じだ!”と当たり前のことに感動していると、それを見透かされたように女将さんから「何処でテナガエビをやってるの?」と聞かれた。
「多摩川です」と答えると、オッサンと同じ記事を見た客も多いらしく「けっこうアッチの方からも買いに来るのよ!」と一通り十字天秤仕掛けの釣り方を伝授してくれた。
最初は大丈夫かな?と心配になったけれど女将さんもなかなかの手練(てだれ)である。
オッサンは道糸付仕掛け(8号玉ウキ・両天秤にはハリが付属)&ハリ(エビ2号・ハリス0.4号)のフルセット【700円】と天秤単体【300円】を購入した。
「器用な人はこれを見本にして自分で作るのよ!」と女将さんは笑うのでした。
仕掛けとハリのフルセット。道糸には黄色いナイロンの2号を使っている
天秤単体
確かに自分で作れないこともないけど、この作りで300円は安いな〜
腕部分が直径1mmのワイヤーロープで出来ていて、ふにゃ〜っと曲がる。
このゆるさがテナガエビに違和感なく喰い込ませるキモなのかもしれない。
フニャフニャの腕
心棒は真ちゅうの直径2.5mmの丸棒で、天秤全体の重量が5gと大体1.5号くらいのオモリの重さだ。
思ったよりも軽い仕上がり
心棒の全長は11cm
オフィシャルのウキは7号の玉ウキで、テナガエビ釣りには大きいがこの浮力で天秤を直立させるらしい。
水中でヤジロベーが立っているのも奇妙な光景だ
この十字天秤の自重は5gと人間からすると軽いのですが、テナガエビには重いらしく、エサをつまんで持ち運べない重さになっている。
よしんばビッグアームが頑張って持っていったとしても、心棒がつっかえて穴にそれ以上引きずり込まれないらしい。
テナガエビ釣りでは根掛かり&仕掛けのロストは日常茶飯事だが、この天秤は二重の意味で根掛かりを防いでくれるシロモノである。
玉ウキが水面下になるように調節するのは十字天秤に限ったことではないけれど、この天秤の場合はしっかりと天秤を直立させて、水のゆらぎでエサを踊らせてエビにアピールさせるのが重要である。
7号の大きな玉ウキは水中でも目立つから、少々深めに沈めてもウキは見える。
まぁウキが見えてもこの仕掛の場合は、アタリがウキに明確に出るわけじゃないから別にいいんだけれども。
とにかくウキを沈めてヤジロベーと直立させるのがキモである。
ひとつ気をつけなければいけないのが、仕掛けを投入する角度である。
竿の長さと同じか自分よりの手前に投入する。
沖目の遠くに投入すると、仕掛けを上げた時に天秤の重さで手前にブ〜ン!っと戻ってきて、その勢いで根掛かりの率が高くなる。
せっかく根掛かりしづらい工夫がされた天秤なのに、釣り人のNG操作で仕掛けロストは残念すぎます。
釣り方は投入してから数十秒〜1分位放ったらかしにして、そ〜っと竿を上げるとエビのキックバックが感じられ自動的にハリ掛かりする。
ウキを見ながらアタリを判断するわけではなく、適度な時間のタイム釣りになる。
たもんで、一本竿よりも複数本の竿で順番に聞き上げるというような釣り方が効率的でしょう。
実際に十字天秤を使ってみて感じたこと。
最初は仕掛けの重さと長さに戸惑った。
しばらく置いても「アタリないなぁ〜」っと思って、竿を上げてみると大体ハリスが絡まっていた。
これは仕掛けを斜めに落としているのが原因だったので、垂直にゆっくりと投下するようにしたらハリスも絡まずスムーズに落とせるようになった。
実釣時にはまだテナガエビが小さかったからかもしれないけれど、ウキを横に持ってゆくエビ特有の動きは見られなかった。
ウキを見ていてもエビが喰い付いているのかはサッパリ分からない。
ただ、ヤジロベーが見える浅場では、時折クルリ!とヤジロベーが回転するのが見えて、「お!エビが来てる!」というのは判断できた。
竿をそ〜っと上げてみて、エビの引きを感じられれば100%ハリ掛かりしていた。
これが通常仕掛けだとハリ掛かりせずに逃げられることも多々あるんだけれど、この秘密は柔らかいワイヤーの腕にあるのかな?
沖釣りでもアタリがあったら適度にラインを送って喰わせる事がある。
この時、緩めすぎずにわずかでもテンションをかけておいたほうがハリ掛かりすることが多かったりするので、テナガエビもそれど同じなのかもしれない。
普通仕掛けと天秤仕掛けの釣れた割合は、3:7くらいで天秤仕掛けに軍配が上がった。
ダブルというお楽しみもあるぞ!
普通仕掛けが「点」の釣りならば、十字天秤仕掛けは「範囲」の釣りといえるかもしれない。
天秤の二本のハリスは15cm離れていて、二つのエサでエビに強力にアピール!
例えエサを取られたとしても、もうひとつのエサで確実にフッキングっていうのは大げさなんだけれど、まぁ水中ではそんな感じだと思う。
ある程度離れた場所からの集魚力はあるだろうから、スペースのあるポイントでは有効だと思う。
逆に十字天秤が苦手なのが狭い隙間や穴を攻めること。
天秤の形状からしてピンポイントに攻めることは出来ません。
「あの穴にエビいそうだな・・・」と思ってもその穴にエサを落とせないのが残念なところです。
頑張って穴に入口付近に天秤を置くくらいかな。
釣りをする場所を選ぶのがこの十字天秤ですね。
これがメリットなのかデメリットなのかは釣り場と釣り人の考え方次第だと思います。
確かにこの十字天秤仕掛けは釣れるんだけれど、正直なんか複雑なんです。
「オートマチックに釣れる」というのは果たして”釣り”と呼べるのか?
オッサン的には、テナガエビ釣りは繊細な駆け引きが味だと思っているのですが、その味が天秤では味わえない。
しかし、釣れなきゃ味もクソもないわけで、釣れたほうが楽しいに決まってるじゃん!
いや、釣りっていうのは釣れればいいってもんじゃないでしょ!
いやしかし・・・
こんな葛藤を味わいながら、オッサンは一本を天秤仕掛け、もう一本を普通仕掛けの二本竿作戦で釣りをするという、何とも煮え切らないテナガエビ釣りをしているのでした。