毎年、ゴールデンウィークになるとミジンコを採取しなければならない。
別に義務ではないんだけれど、この時期がミジンコを繁殖させるには適した時期なので、これを逃す訳にはいかないのだ。
ミジンコって暖かいほうが増えると思われがちなんですが、夏なんかは余程環境が整っていないと増えない。
現状維持は放ったらかしでも良いんだけれど、増やすとなるとかなりの手間が必要になる。
程よい水温、程よい水質、程よい日射・・・・・そんな環境を人工的に作るのは、忙しい現代人には至難の業である。
反面、5月くらいならまだ気温も穏やかなので、放っておいても容易にミジンコが繁殖してくれる。
ミジンコ飼育をはじめて数年経過するが、学んだのは「ある程度の適当さ」と「繁殖の時合を逃さない」のが爆発的に繁殖させるキモということだった。
愛車(ママチャリ)を飛ばしてミジンコ採集池をめざす。
※採取池はミジンコ資源保護のため、残念ながら明かすことが出来ません。
現場に到着すると池にはザリガニ釣りをしているファミリーがいたが、オッサンの目指す池はそちらではない。
チョット離れた水たまり程度の場所である。
ここは本当に水たまり規模なので、最近は雨が降っていないので干上がっていないか心配だった。
水はかなり減っていたけれど、よ〜く水中を凝視するとミジンコがウヨウヨ泳いでいたので早速仕事に取り掛かる。
持ってきたのは1リットルペットボトル二つと500mmのペットボトルを切ってコップにしたものである。
初めてここに来た時は、バケツやらスポイトやら訳のわからん道具を持ってきたけれど、今は本当に使う道具のみである。
人間日々成長だ!
今はもうこれだけ!
早速ペットコップで水をすくうと、お目当てのミジンコがワラワラと入ってくる。
ひとすくいで数十匹のミジンコが入ってくる
ダフニア(いわゆる普通のミジンコ)、ケンミジンコが多いが、カイミジンコもコップの底の方にうごめいている。
カイミジンコはメダカが喰わないからいらないんだけれど、どうしても入ってしまうのでしょうがない。
底の方にはいらないカイミジンコが
わざわざペットコップを作ってくるのは、グニュッと潰して注ぎ口を細くすると、小さなペットボトルの口からこぼすことなくミジンコ水を入れることができるからです。
すぐに1リットルのペットボトル2つに今年の種ミジンコが一杯になりました。
作業時間はわずかに5分
このわずか5分のために、片道30分の道のりをチャリで飛ばしてきたのであります。
オッサンが作業していると網を持った子供が「何してるの?」と声をかけてきた。
「ミジンコを取ってるんだよ!」と答えると「ホラ!黒メダカ取れたよ!」とプラケースを見せる人の話を聞いていないご子息。
傍ら立つ父親であろう男性が、ミジンコを採取している怪しいオッサンに怪訝な視線を浴びせてくるので、優しいオッサンはご子息に説明して差し上げました。
「それはカダヤシって言って外国から来たメダカなんだよ。黒メダカはここら辺にはいないんだよ!」
父親は”お前空気読めよ!”の視線を浴びせてくるが、オッサンは正しい事を教えてあげて今日も良いことをしたな〜っと気分良く帰路についたのでした。
背後から「メダカじゃないんだって!」とご子息の声がこだました。
帰り道にふと心配になった。
あのガキンチョが腹いせにカダヤシをミジンコ池に投入しないか・・・
例え数匹でもカダヤシを投入されたら、あんな小さな水たまりのミジンコなんてひとたまりもないだろう。
帰宅して、ミジンコ養殖池に新たなミジンコを投入する。
今年もたくさんミジンコが湧きますように
既に養殖池には「今年はミジンコを採取してこなくて良いかな?」くらいにミジンコが湧いていたんだけれど、同じミジンコだけだと遺伝子の多様性が保てないから新たなミジンコを投入しました。
今年もたくさんミジンコが湧きますように!
後日、オッサンがミジンコのことについて調べているとちょっと古い新聞記事に気になる事が書いてありました。
その記事によると・・・
日本のミジンコはどれも北米出身のたった4匹のメスから増えた「外来種」。
オスと交尾せずメスだけで卵を生む「単為生殖」によって同じ遺伝子型をもつクローンばかりが増えた。
乾燥に強い「休眠卵」を交尾せずに生む特殊なタイプ。
最後に研究者が「日本のミジンコは交尾せずに多様性を作れないので、集団としての寿命はいずれ尽きる。新たな移入がなければいずれ日本から消えてしまうだろう」
何!日本のミジンコはいずれ消える!?
これはマズイがよくよく考えてみれば、ミジンコがいなくなる前に人類の方が消えているだろう。
いやそれよりも、ミジンコがいなくなる前にオッサンがミジンコ養殖に飽きているだろう。
いやいやそれよりも前に、あの親子が投入したカダヤシでミジンコ池のミジンコが全滅しているだろう。