あれは9月の上旬にシロギス船で出港した時でした。
予報は雨。
どうみても雨が止みそうもない雨。
同行した友人オッサン2号・3号は、予報の時点でおよび腰だった。
確かに、雨天に沖で釣りをするなんざ正気の沙汰ではない。
オッサンもそう思った。
しかし、オッサンは基本的には「晴れ男」なのだ!
今までどおり、かなりの確率で晴れるという自信があった。
というわけで、嫌がるオッサン2号・3号を説得し(半ば、お子様のように駄々をこねて)出船したのでした。
晴れると思っていたオッサンが持参したのは、もう25年以上も前に大学時代に登山で使用したヨレヨレのカッパだ。
「まぁ、多少の雨ならこれで大丈夫だろう。なにしろ山用のカッパなんだし」
海を舐めたこの浅はかさが今回の悲劇を生むとは、この時のオッサンには知る由もなかったのでした。
出船前では年代物のカッパは、雨の中でのその機能をマットウしていました。
しかし、出船後小一時間もすると・・・
まずは肩から浸水が始まり、それが全身に行き渡るまでは大した時間もかかりませんでした。
ましてや沖の雨は陸上とは違い、殴りつけるような勢いです。
このときには年代物のカッパは、もう完全に防水機能はありませんでした。
当然、カッパの中に着ていた服はビショビショで身体を伝って垂れてくる雨が長靴の中で溜まってゆきます。
9月上旬だというのにオッサンは身体の芯から冷えてきっています。
身体全体は小刻みに震え、本能が身体を温めようとブルブルと震える。
当然ながら指もプルプルと震えるので、エサのアオイソメもプルプルと同調し、エサ付けもままならない状況。
もうシロギス釣りどころではありません。
今回の強行釣行の言い出しっぺなので「寒いっすぅ!」とは言えず、ずっと我慢していました。
釣りをしていて「帰りたい」と思ったのはこのときが初めてでした。
オッサン2号・3号をみると、しっかりと暖かそうなレインウェアを装着し、その内部には天然の脂肪分で完全武装。
この時だけは、二人の必要以上の脂肪をうらやましく思ったことはありませんでした。
沖上がりと同時に車へダッシュ!
速攻で着替えたのは言うまでもありません。
あの時もう少し気温が下がっていたら、それこそ命に関わっていたと思います。
あ〜人間っていうのは自然には敵わないんだなぁ〜〜と痛感したのでした。
今回の命がけの経験から「防水機能」だけはしっかりとしたレインウェアは必須です。
ここだけは妥協できません。
大手釣りショップをハシゴして、いろいろなレインウェアを直に触って調べてみました。
数多く観ているとそれなりに目利きになってきます。
その中でオッサンなりに釣り用レインウェアの選択基準が形になってきました。
※あくまでオッサン個人の基準なので、反論もあると思いますが一意見として読み飛ばしてくださいね。
行く先々の釣りショップの店員さんに質問し、みなさん口を揃えて言うのが「ゴアテックスなら間違いない!」です。
高い次元で防水性能と透湿性能を両立した最上級素材ゴアテックス。
ゴアテックスを買っておけば他の選択肢はいらないほどです。
そんなゴアテックスですが、唯一の欠点がとても高価です。
安いゴアテックス素材のレインウェアでも3万円は下らないでしょう。
オッサンの意見を言わしていただければ、釣り具メーカーの商品はどれも値段が高い!
レインウェアにそんな金だせるか!!です。
妥協できないと言いつつ、早速値段で妥協する打たれ弱いオッサンなのでした。
言い訳をいわせていただければ、ゴアテックス製は縫い目が入ります。
生地自体の性能がいくら良くても、縫製部分の防水は完全ではありません。
メーカーとしては縫製部分に様々な工夫をこらして防水を施しますが、そのうちに水が染みこんでくるのは確実でしょう。
例の年代物のカッパの恐怖からすっかりトラウマになっています。
値段で選ぶとなると選択肢に上がってくるのがPU(ポリウレタン)製のレインウェアです。
ポリウレタンはビニールとゴムの中間のような素材です。
防水性能も高く、軽くてしなやか、伸縮するので動きやすいと利点が多い。
シマノ・ダイワといったメジャーなメーカー以外の商品には、上下で8,000円を切るお手頃な商品もあります。
しかしポリウレタンにも大きな欠点があります。
【耐久性が著しく低い】らしいのです。
冒頭に出てきたオッサン2号がポリウレタン素材のレインウェアを着ていたのですが、5回くらい着たところで股部分が裂けたと言っていました。
しかもそのメーカーは釣具の某一流メーカー製で数万円もしたらしい。
購入したお店で見てもらったら、「まぁ、こんなもんですよ!ひとシーズンもてば十分ですよ!!」と簡単に言われ唖然としたらしい。
決して安くはないお金を出して、ひとシーズンももたない使い捨て感覚が全く理解できん!
釣りの世界も貧乏とセレブの格差社会なんだなぁ〜と実感したエピソードでした。
そこで白羽の矢が立ったのが、
漁師御用達の「塩化ビニール製(PVC)」のレインウェア
です。
名前の通り厚手のビニール素材で、見るからに丈夫で水を寄せ付けないゴッツさを持ち合わせています。
生地のつなぎ目も縫製ではなく熱圧着をしていて、防水も完全なようです。
そもそも海のプロである漁師さんは、雨の日だけでなく通常の業務時にも塩化ビニールのレインウェアを着ている。
プロが使っているなら耐久性・防水機能は文句ないでしょう。
少し大きめの釣具屋さんに行くと、どこにでもこのPVC製のレインウェアコーナーは置いてあるので使っている釣り師も多いのだと予測できます。
難点をあげれば「ダサい」&「重い」ですが、ヘタすれば命にかかわる状況でダサいだの重いだの言ってられません。
最近では釣りのウェアもファッショナブルになっていて、釣り番組などを観ているとキレイな女性アングラーがおしゃれなウェアで釣りしている。
現実の海上では、そんなギャルがいるはずもなく、むさいオッサン達オンリーの世界だ。
(まぁ、釣りモノによっても違うのでしょうが・・・)
そんな環境なので沖へ出れば格好なんぞど〜でもよくなるのである。
とにかく生きて帰りたいなら性能第一です。
というわけで防水性能とお値段のバランス(ほとんどお値段で決めたのですが・・・)を熟考した結果「塩化ビニール製レインウェア」に決めました。
PVC製のレインウェアを何件かの釣具屋さんで実際に試着する。
見た目と手触りからの想像通り、着てみるとやはりゴワゴワして重い・・・
そんな中でも着やすくてリーズナブルだったのが「アマノ釣具 ZEALOT フィッシャーマンレインウェアー」です。
最大の決め手は値段がリーズナブルなのに、サロペット(胴付きズボン)が前開きだったんです。
サロペットを持っている友人曰く、
「サロペットを買うなら絶対に前開きにしなよ!
船で用を足す時に前が開かないと悲惨だよ!!」
その悲惨の内容を深く聞きはしなかったが、どうやらダダ漏れしたことは想像に難くない。
船中では着替えなんぞがあるわけない。
ダダ漏れ状態のオッサンが我慢しながら釣りをするというのを想像すると、確かに悲惨な光景であるのは間違いない。
話をサロペットに戻す。
ZEALOTのレインウェアは扱っているお店が少なく、上着の方はジャストサイズがあったので即購入だったのですが、サロペットで同じサイズがない。
ネットでの購入も考えたのですが、どうしても試着したかったので目的サイズのサロペットを探そうと思っていました。
そんなある日、某キャスティング品川シーサイド店に行くとサロペットが1000円引きセールをやっているではありませんか!
しかし、セール対象はZEALOTではなく、よく見かける「EBISU(エビス)」だったのです。
エビス製でも前開きタイプはあるのですが、お店には前閉じしかありませんでした。
数万円もする高価なレインウェアで1000円引きなんぞ焼け石に水ですが、数千円の商品での1000円引きはかなりデカイ。
そこでオッサンのスーパーコンピューターが計算し始める。
所有しているZEALOTの上着とこのエビスのサロペットは多少色が違うが、海の上で格好は気にしない・・・
お財布と相談の結果はOKだ・・・
セール品の中には前開きはないが、自分で加工できるのではないだろうか・・・
気が付くと、自分サイズのサロペットを握っていたのでした。
性能第一とは言うものの、背に腹は代えられない残念なオッサンなのでした。
さて、モノは決まったので前開きの商品の構造を研究するべく、他の商品をいろいろと物色する。
複雑な前開き構造もあるが、中には「これならできそうだぞ!」と思わせる簡単な構造もある。
というわけで、前閉じサロペットを前開きに改造するべく行動開始したのでした。
今回、改造するポイントは以下の3箇所です。
着替えや用を足す時には、前閉じのサロペットだとかなり難儀します。
船が揺れている中、ましてや寒さでかじかんだ手でサロペットを脱ぐのは至難の業です。
前開きならスムーズで素早い作業が可能になります。
今回購入したサロペットは、ショルダーベルトが固定されているので着替えづらいという難点があります。
このショルダーベルトをワンタッチで脱着できるバックル式にすればスムーズな着替えが可能になります。
動きやすくするためかどうかはわかりませんが、サロペットはかなり幅広に作られています。
実際にオッサンが二人入れるほどの幅です!
いくらなんでも市販品のままでは幅広すぎるので、幅を詰めるためのホックを付けてみます。
以上の3部構成でございます。
いよいよ作戦開始!
>>>サロペット改造計画【前開き編】へ