初春の京浜運河にて(※ハゼ釣りではありません その2)

京浜運河の粋な演者

寒い冬がやっと過ぎ、ぼちぼちと暖かくなってきた初春のある日、何気なしに思ったのでした。

 

「そうだ!京浜運河に行ってみよう!!」

 

 

 

ハゼを釣るわけでもなく、釣れるわけでもなく、釣り人がいるわけでもなく・・・

 

京浜運河に行くこと自体に何の意味もないのだが、人は春になると無意味にアクティブになるものであり、それは年齢に関係なく訪れる狂気でもある。

 

 

秋ハゼ釣り時に通い慣れた道を愛車(ママチャリ)を飛ばして何の目的もない運河に向かう。

 

 

道すがら思う。

 

”街を行きかう人の中で、本当に必要な目的に向かって移動している人はどれくらいいるのだろう?”

 

”ど〜でもいい意味のない理由をこじつけて、必要ない用事に向かっているだけなのでは?”

 

 

春は人を狂気にさせる嫌な季節だ。

 

 

懐かしいハゼ釣り場に到着。

 

秋に通っていた時には全く分からなかったが、護岸に菜の花が植わっていたんだ!

 

 

ちょうど菜の花が護岸いっぱいに満開になっていて、イメージとは全く違った風景が広がっていました。

 

 

今日は雲一つない快晴で、菜の花の黄色と青空がきれいなコントラストになっている。

 

ハゼ釣りに来ていた秋の日差しとは違い、春の日差しは爽やかで運河全体が暖かい日の光に照らされて心地よい。

 

 

 

初春とはいえまだ肌寒い日が続くが、今日はとても暖かく朗らかな陽気だ。

 

あまりに気持ちがよいので、護岸に寝転んでみた。

 

 

 

目をつぶってボ〜っとしていると、先ほどから聞こえてくる音色に意識が集中する。

 

その音色は和楽器らしいが、尺八的な低音ではなく和フルート(何ていう名前の楽器かわかりません)的な高音だ。

 

演者はかなりの手練れらしく、音楽に全く素人のオッサンでもかなり上手いのが分かる。

 

 

京浜運河のすぐ脇は古いがそこそこ高層な団地になっていて、音色が団地に反響してよく響き渡る。

 

 

 

目をつぶりながら、その音色にしばし聞きほれる。

 

知らない演目はただ聞いているだけなんだけれども、知っている曲が流れ始めた。

 

オッサンでもよく知っている♪春の小川♪を演奏している。

 

 

無意識に歌詞をのせて曲を聴いていると、サビの部分でオタマジャクシ2段くらい音程が下がった!

 

思わずズッコケるオッサン。

 

せっかく気持ちよく暗唱していたのに・・・

 

 

演者はお構いなしに2番に突入。

 

そして先ほどのズッコケ現場でまたしても音程が・・・

 

 

たまにアーティストがライブで、CDよりもキーを下げて歌うことがあるけれども、歌ではなく演奏でフェイクされてもなぁ〜

 

演奏に感情を込めた結果かもしれませんが、さいたまスーパーアリーナで数万人のオーディエンス相手に感極まるならともかく、京浜運河でオーディエンスと呼べるのは護岸に寝転んだ奇妙なオッサン一人だろうから、フェイクも空しく響き渡る。

 

 

 

 

「一体、どんな人が演奏してるんだろう?」と興味がわいたので帰り際に覗いてみたら、緑道のベンチに座って初老の演者が気持ちよく演奏を続けていた。

 

目をつぶって気持ちよさそうに演奏していたが、オッサンは心の中で感想を述べる。

 

「シロウトの意見だけれど、その外し方はど〜かなぁ!」

 

 

 

やはり春は人を狂わす季節だ。

 

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